資産、負債、純資産、費用、収益の覚え方 – 暗記に頼らない覚え方

貸借対照表や損益計算書を作成する際に、資産・負債・費用・収益の各要素の知識が必要となります。ですが、簿記を初めて学習する方にとって、各勘定項目が、四つの要素のどれに当たるのかを覚えるのが、大きな山となります。

しかし、勘定と要素の関係について、暗記に頼らない覚え方があるので紹介したいと思います。

手順1 勘定の残高が借方、貸方なのかを把握する

まず、各勘定の残高が借方・貸方のどちらになるかを考えます。ここでも、暗記で覚えるのではなく、現金を使った仕訳で考えるとおぼえやすいです。

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このような仕訳があったとします。


販売用のコップ100個を、1個につき300円で仕入れ、現金で支払った。

この場合、現金で支払ったことで現金勘定の残高が減少します。現金残高が減少する場合は貸方の数字が減るので、右側に現金勘定を書きます。そして、それに対応する勘定は、仕入となるので、左側に仕入勘定が入ります。
その結果、仕訳はこのような形になります。

仕入 30,000  現金 30,000

ここから、仕入勘定の残高は借方になると判断します。


銀行から現金1,000,000円を現金で借り入れた。

この場合、借り入れた額の現金勘定が増えるので、仕訳はこのようになります。

現金 1,000,000  借入金 1,000,000

また、現金が関係しない取引でも、初学者の方は現金勘定を基準にした方がわかりやすくなります。


商品500,000円を売り上げ、代金は掛けとした。

売掛金の取引ですが、まずは現金での取引として考えると、売り上げた分の現金が増えるので、仕訳はこのようになります。

現金 500,000  売上 500,000

ただ、今回は現金ではなく掛けでの取引なので、現金勘定を売掛金勘定に変更することで、正しい仕訳となります。

売掛金 500,000  売上 500,000

これらの仕訳から、売掛金勘定は借方、売上勘定は貸方となるとわかります。

手順2 勘定の残高を翌年に繰り越せるかどうか

次に、勘定の残高を、翌期へ繰り越せるかどうか考えます。

例えば、期末を迎えた際に、現金の残高が10,000円だとします。期が変わる度に現金をゼロから集めるのはおかしいので、翌期でも、当然この現金は持ち続けます。
他の勘定も同様に考えると、例えば借入金が200,000円あるとして、これを翌期へ繰り越さないと帳簿から借金が消えてしまい、踏み倒したかのような形になります。

一方、仕入勘定を考えると、期末の仕入残高が50,000円の場合、これを翌期へ繰り越すと、新しい期を迎えた途端、50,000円分の仕入が発生したことになります。
また、売上勘定の前期の残高が80,000円、今期の残高が90,000円だとすると、仮に売上勘定を繰り越してしまうと、今期の帳簿上の売上が170,000円となってしまいます。

このように、勘定科目には翌期へ繰り越すものと、繰り越さないものがあります。
そして、『翌期へ繰り越す(=次期繰越)勘定は、資産・負債』となります。一方、『翌期へ残高を繰り越さない(=損益勘定に振替える)勘定は、費用・収益』となります。

貸借対照表、損益計算書への転記

簿記試験では、財務諸表の作成が出されますが、貸借対照表はある時点での企業の財務状況、損益計算書は企業の収益状況を表す財務諸表です。そこから、『残高を繰り越す勘定は貸借対照表、繰り越さない勘定は損益計算書』となります。

そして、最後に残高を借方、貸方に転記します。

前受収益は、要注意

前受地代など、前受収益は自分に現金が入ってくるので、資産や収益と考えてしまうかもしれませんが、前受収益は、負債となります。

これは、サービスの提供が完了したかどうか、という点から考えるとわかりやすく、このような仕訳があったとします。


駐車場として貸し出した土地代20,000円を、現金で受け取った。契約期間は、来月から1年間である。

この時、仕訳はこのようになります。

現金 20,000  前受地代 20,000

ただし、この時点では土地を提供するというサービスが、完結していません。いわば、土地を一年間貸し出すという責任が残っている訳です。なので、資産や収益ではなく、負債となります。

もしくは、翌期へ繰り越すかどうかでも、前受収益がどれに属するのかを判断できます。

まず、今期に前受収益を受け取ったとして、期末で損益に振替えてしまうと、帳簿上から土地を貸し出す契約がなくなってしまいます。ただ、それだと帳簿上も契約上もおかしいので、翌期へ残す(=繰り越す)必要があります。また、前受地代は、さきほど見たとおり貸方に残高が残ります。
ここから、「翌期へ繰り越す、かつ残高が貸方=負債」と読み取ることもできます。

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