原価計算の基本

工業簿記では、製品の製造にかかった原価を求める計算が中心となります。ですが、この原価計算、特に加工費の考え方に悩む方が多くいらっしゃいます。
今回は、その原価計算の基本をおさらいしたいと思います。

原価計算とは

そもそも、『原価計算とは何か』ですが、製品を作成するのにかかった費用を計算することです。また、工場において毎月在庫を残すことなく製品を製造することは難しく、製造途中の製品(仕掛品)が残ります。簿記2級では、完成品と仕掛品の製造費を計算して、それらを作成するのにいくら原価がかかっているかを求めることを原価計算と呼んでいます。

簿記2級で出題される、原価計算の基本

簿記2級の工業簿記では、このような形で問題が出題されます。


次の資料に基づいて、平均法においての月末仕掛品原価、完成品総合原価、完成品単位原価を求めなさい。

生産データ

月初仕掛品 400kg (0.5)
当月投入 3,800kg
合計 4,200kg
月末仕掛品 500kg (0.6)
完成品 3,700kg

材料は、工程の始点で投入する。
( )は加工進捗度を表す。

原価データ

材料費 月初仕掛品 80,000
当月投入分 760,000
加工費 月初仕掛品 43,000
当月投入分 817,000

どうでしょうか?
問題を解く以前に、問題文の意味をうまく把握できない方もいらっしゃると思います。ですが、工業簿記ではこの原価計算、イコール解答へとつながります。ですので、原価計算は必ず必要なスキルと思ってください。


それでは、解説をしていこうと思いますが、「材料費」「加工費」といった表現だと初めての方はわかりづらいので、問題の表現を変えてみましょう。


山形株式会社では、イチゴジャムを製造しており、月末に製品の原価計算を行っています。
とはいえ、毎月全ての材料を製品に仕上げるのは不可能で、先月末も加工途中のイチゴジャムが残ってしまいました。とはいえ、それらを廃棄する必要はないので、今月にジャムを製品に仕上げ、出荷する予定です。

■今月投入分に関する情報

先月末のイチゴジャム(仕掛品)は、400kgが残っていました。それらの原価情報は、このようになります。

材料費:80,000円
光熱費:43,000円

また、全体の工程のうち、5割まで進んでいます。

次に、今月新たに投入した材料と、今月分の光熱費は、このようになります。

イチゴ:3,800kg
材料費:760,000円
光熱費:817,000円

■今月生産分に関する情報

月末になり、製品と仕掛品を確認したところ

完成品
3,700kg

仕掛品
500kg

このようになりました。
また、仕掛品は全体の工程の6割まで進んでいます。

さて、問題の言い回しを変えてみたのですが、いかがでしょうか。
ここからは、新たに書き換えた文書を参考に、原価計算を行っていきます。

単位あたりの材料費を求める

それでは、材料費の計算から始めましょう。

簿記2級の原価計算における材料費の計算は、まず今月投入分の材料費の合計を求めます。そして、今回は完成品の単位が「kg」なので、「1kgのイチゴジャムを作るのに、材料費はいくらかかったか」を計算してみましょう。

問題文から、月初仕掛品のイチゴジャムに使用した材料費が80,000円、今月新たに投入した材料費は760,000円と読み取れます。ですので、今月工場では、840,000円分のイチゴを消費したと考えられます。

そして、使用した材料の合計が、400kg+3,800kg=4,200kgとなるので、1kgあたりの金額を求めると

840,000円÷4,200kg=200円/kg

つまり、今月使用した材料費は、kgあたり200円になると計算できました。

今月分の完成品、仕掛品の材料費を計算する

そして、次にこの情報を使って、完成品の原価を計算します。
200円/kgのイチゴを使って3,700kgのジャムを製造したので

200円/kg×3,700kg=740,000円

今月の完成品は、740,000円分の材料を用いたことになります。

次に、仕掛品の材料費ですが製造途中のイチゴジャムは500kgなので

200円/kg×500kg=100,000円

今月の製造途中のイチゴジャムには、100,000円の材料費が使われています。

これらを整理すると、材料費はこのように求められました。

■今月生産分に関する情報

完成品
材料費:740,000円

仕掛品
材料費:100,000円

加工費は、進捗度を考慮して計算する

次に、加工費の計算ですが、材料費の計算にくらべて、少々難しくなります。

まず、月初仕掛品の加工費を計算してみましょう。

まず、400kgのイチゴジャムが月初仕掛品としてありますが、全体の工程の5割しか進んでいないと書かれています。
と、ここで、頭を切り替えてみましょう。

原価計算では、『400kgのイチゴジャムを半分まで加工した経費は、完成品に換算すると何kg分の経費となるか』と考えます。
つまり、月初にある400kgのイチゴジャムは、5割の工程まで進んでいるので、これを完成品に換算して計算すると

400kg×0.5(進捗度)=200kg

つまり、200kgのジャムを製造するだけの加工費を使用していると考えられます。

ですので、材料費と同様にkgあたりの加工費を計算すると

(43,000円+817,000円)÷(200kg+3,800kg)=215円/kg

完成品1kgあたり、215円の加工費がかかっていると考えられます。

今月分の完成品、仕掛品の加工費を計算する

そして、次にこの情報を使って、完成品の加工費を計算します。
3,700kgのイチゴジャムを製造するためには

3,700kg×215円/kg=795,500円

今月の完成品は、795,500円の加工費を用いたことになります。

次に、仕掛品の加工費ですが、こちらは単純にかける訳にはいきません。
というのも、今月末の仕掛品は500kgですが、加工進捗度は0.6なので、先ほどと同様に『完成品に換算すると、何kg分の加工費を用いたか』を考慮する必要があります。

ですので

(500kg×0.6)×215円/kg=64,500円

今月の仕掛品は、64,500円の加工費を用いたことになります。

以上の内容をまとめると、加工費はこのように求められました。

■今月生産分に関する情報

完成品
加工費:795,500円

仕掛品
加工費:64,500円

今月分の完成品原価、仕掛品原価、単位原価

以上の情報を基に、今月生産した完成品と仕掛品の原価を計算すると

■完成品
740,000円(材料費)+795,500円(加工費)=1,535,500円

■仕掛品
100,000円(材料費)+64,500円(加工費)=164,500円

また、完成品単位あたりの原価ですが、これはkgあたりの原価となります。
ですので

1,535,500円÷3,700kg=415円/kg

となります。

原価計算では、加工費の扱いに注意!

簿記2級の基本的な原価計算を解いてみましたが、工程を基にした加工費の計算で、多くの方が難しいと感じています。
上にも書いていますが、加工費の計算は『完成品に換算するとどれくらになるのか』という想定で計算・解答をしていただくと、きちんと解けると思います。

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