初めて簿記を勉強される方

毎年、多くの人が簿記試験を受験しています。もちろん、簿記の資格を取得したくらいでは就職できない、昇級につながらないかもしれませんが、簿記で扱う内容はビジネスの基本なので、例え3級の資格であっても、仕事では絶対に役立ちます。

簿記試験は、入学試験とは違い合格人数が決まっている訳ではないので、合格点(70点)以上を取れれば合格となります。ですが、簿記の基礎から学ぶ3級であっても、やはり半分くらいの方が試験に落ちてしまう方もいます。

繰り返しですが、簿記3級は決して難しい試験ではないので、しっかりと勉強すれば大丈夫なのですが、落ちてしまった方は、参考書を買って、早々に仕訳に入ってしまい、何となく問題を解いて試験に臨んでいるからではないでしょうか。つまり、理解しないままに勉強を続けてしまい、結局落ちてしまうのではないでしょうか。

もちろん、それで合格する方もいらっしゃいますが、せっかく勉強するのだから、簿記の目的や意義を知っておいた方が、簿記の理解につながります。

また、3級を合格し2級に挑戦する方もいらっしゃいますが、3級と違い2級は、しっかりと簿記を理解してなければ、合格のハードルはかなり高くなります。もし、まぐれで3級に受かった方も、2級を受験するには3級をしっかりと理解しておくことが必要となります。

この記事では、あまり市販のテキストでは触れられていないけれど、簿記を学習する上でとても大事なポイントをまとめています。ぜひ、しっかり覚えて下さい。

そもそも簿記とは何か

例えば、皆さんが自営業をしていたり、もしくは会社に勤めているとします。
仮に、販売業だとしたら、商品を仕入れてそれを販売し、利益をあげます。その際に、販売する商品を地べたに置くのは見た目にも衛生的にも良くないので、専用の棚やケースを購入し陳列するはずです。また、顧客を管理するためのパソコンや、水道光熱費もかかります。
一方、製造業の場合は、物を作るために材料を仕入れ、それを加工し製品を作成します。そして、それを販売して収益をあげます。その他に、一部の加工を外部の業者に外注し、商品を作ることもよくあります。

商品や材料を仕入れる場合、当然お金が必要となります。自営業を始める前に貯金をしていたとしても、銀行から借りることもあるでしょう。もしくは、他の会社に出資することもあるかもしれません。

このように、仕事においては、様々な営業活動や取引が発生し、会社の財務状況も日々変動します。そこで、こういった変化をしっかりと把握するために必要なのが、簿記なのです。

取引を把握するための財務諸表

先ほど、簿記とは何ぞやを確認しましたが、では財務状況をどのように確認したら良いのでしょうか。実は、この確認を行うために作成するのが、財務諸表と呼ばれる貸借対照表、損益計算書となります。

貸借対照表
企業のある時点での資産や負債、純資産の残高を集計したものです。わかりやすく、普通の家庭に言い換えると、どれだけ貯金があって、どれだけ借金やローンが残っているかを集計したものです。
ですので、資産から負債を引いた金額(純資産)が、企業が所有する財産となります。

損益計算書
会計期間内で、どれだけの収益があり、どれだけの費用を使ったのかを集計したものです。これも、普通の家庭に言い換えると、1年間にどれだけ年収があって、どれだけ支出があったか、を集計したものです。
ですので、収益から費用を引いた残高が、今年の黒字、もしくは赤字となります。

これらの財務諸表を求めることで、企業にどれだけの財産があり、どれくらい黒字(もしくは赤字)を出しているのか、を把握することができます。そして、これが簿記の目的となります。

単式簿記と複式簿記

皆さんが学習する簿記では、単式簿記ではなく複式簿記を用いて記帳されます。この言葉は、試験で問われることはないのですが、仕訳の基本となる考え方なので、しっかりと覚えてください。

まず、単式簿記という言葉についてですが、皆さんが家計簿を付ける場合は

給料 200,000
食材 -5,000
医療費 -3,000
192,000

このような感じで、集計すると思います。このように、一列で集計する方法を単式簿記と呼びます。
ですが、家計簿レベルならばこの単式簿記でも大丈夫なのですが、正確性が求められる企業会計では、この単式簿記では対応できません。

例えば、会社で机を現金で購入した場合、経理上は備品として計上されます。これを単式簿記で記帳すると、このようになります。

備品 50,000

ですが、このままだと何を使って購入したのか(現金なのか、小切手なのか、未払金なのか)がわかりません。また、備品は使えば使うほど傷が付いたりし、価値が下がります。買った時は50,000円の価値があったとしても、毎年、その価値が減っていくのですが、単式簿記だと、その価値が減った部分の書きようがありません。

となると、貸借対照表上では50,000円の備品があると書かれていても、かなり使い込んでいるので実際には10,000円の価値しかない。つまり、貸借対照表に正しい数字が書かれていない⇒財務状況が正しく把握されていない、ということになります。
これは、簿記の目的からは離れてしまいます。

ですが、複式簿記の場合は、こういった価値の減少も集計することができます。

備品を購入した取引を、複式簿記で記述すると

備品 50,000 現金 50,000

このようになります。
また、備品の価値が10,000円になってしまった場合は

減価償却 40,000 備品 40,000

このようになります。

複式簿記の場合は、列が二つなので、左側(借方)の残高と右側(貸方)の残高を集計すると、左側に10,000円の残高が残ります。これが、現在の備品(=机)の価値となります。
このように、複式簿記の場合は、記帳するさいにチョット手間がかかりますが、正確に企業の財務状況を把握することができます。故に、簿記では複式簿記が用いられるのです。

資産・負債について

資産
現金、預金、売掛金、備品などが該当します。市販のテキストでは、増えると嬉しいプラスのもの、などと書かれる場合もありますが、いわゆる「財産」と考えて大丈夫です

負債
買掛金、借入金などが該当します。こちらは、マイナスの財産と説明する人もいますが、「しなければならない責任」と捉えると良いと思います
例えば、銀行からお金を借りたときは、借入金という負債が増えますが、これは「借りたお金を返さないといけない責任」とも言えます。また、来年の駐車代を予め受け取ったり、受取利息を最初に受け取った場合、前受地代、前受利息といった勘定を用いて仕訳をします。この時、「土地代は増えると嬉しい資産だから、前受地代も資産」と間違ってしまう方が多いのですが、「前受地代は、来年、駐車場として使う土地をきちんと提供する責任」、「前受利息は、来年、きちんとお金を貸し続けなければならない責任」ということなので、これらは負債となります。

費用・収益について

先ほどの資産・負債が貸借対照表で集計される数字ですが、損益計算書で集計されるのが、費用・収益となります。

費用
いわゆる販売のための仕入や、製造業での材料費などが費用となります

収益
商品を販売したときの売上や、手数料などの収入が収益となります

資産・負債、費用・収益の見分け方

さて、貸借対照表、損益計算書に載る数字について確認しましたが、どの勘定がどの分類に当てはまるのか、暗記が大変と思った方も多いと思います。ですが、それぞれの財務諸表の意味を考えると、暗記不要で当てはめることができます。

まず、貸借対照表ですが、先ほど述べた通り、ある時点での企業の財産を明確にしたものです。企業の財産なので、もちろん持ち続けます。ということは、資産や負債は、常に翌年へ持ち越し(簿記的な言い方だと繰り越し)ます
ですので、帳簿の締め切りを行ったときに、翌期へ繰り越す勘定は資産・負債となります。

一方、損益計算書は、その期の収益を費用を基に、どれだけ黒字、もしくは赤字だったかを集計する票です。ですので、収益や費用の数字はその期だけのものとなります
ですので、帳簿の締め切りを行ったときに、損益に振り替える勘定が収益・費用となります。

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